「規制緩和は大歓迎だが、第一、第二分野が完全自由化されていない段階で第三分野の規制の枠が外されれば、外資系企業はますます不利になる。 第一、第二分野の完全自由化を進め、ここでお互いが同じ土俵に立てたら、改めて第三分野を完全自由化する。
それこそが、フェアなやり方ではないか」つまり、米国側は第一、第二分野での自由競争が実現するまでは、第三分野への国内大手生損保の参入を拒否したわけである。 ここで歴史を振り返ってみれば、わが国における外資系生保の歩みは、国内大手生保とのゲリラ戦の積み重ねであった。
たとえば、かつて「セイホ」という呼称を世界に流布させた国内大手生保は、定期付終身保険や定期付養老保険を中心とした強力なパッケージ商品をもっていた。 保険にも貯蓄性を求める日本人の国民性にマッチした強力な武器であった。
このようにAリコジャパンは今、1996年の「子会社方式による生損保兼営」に続き、二度目の大きな逆風に立ち向かおうとしている。 この逆風は、はた目で想像する以上に激烈なものだ。
正しく認識しているからこそ、「2001年初頭3か月間の動きを見てみないこととくにせいきには、5年後のあるべき姿も見えてこない」と、Aリコジャパン社長のT園靖器は正直に語逆風に立ち向かう自信の裏付け想の転換を迫った。 さらには、入院保険、三大成人病保険、ガン保険、介護保険など第三分野における画期的商品を次々に開発し、徐々に勢力を広げてきたのである。
日本の閉鎖的な市場で伸びていくうえで、第三分野が大きな役割を果たしてきたことは言うまでもない。 言葉を換えれば、苦しい戦いを強いられてきた外資系生保も、これまでは第三分野という名のアドバンテージを有していたといえる。

ところが、2001年の「第三分野への国内大手生保の乗り入れ」は、この唯一ともいえる優位性すらも否定することになる。 さらに、銀行や証券での保険の窓口販売などが普及すれば、文字どおりの「自由競争」に突入するのだ。
「5年前には、5年後、つまり2000年現在のあるべき姿をある程度イメージすることができた。 時代は予想以上に猛スピードで動いている。
2001年3月までに、ものすごいスピードでの状況分析と経営判断が問われるだろう」だからこそ、1995年に着手した経営改革「プロジェクトオゾン」の意味が、今改めて浮かび上がってくるのである。 もしも、あのとき決断していなければ、戸国の口からこれほど率直な感想が漏れることはなかったのではないだろうか。
率直であるためには、多少とも心の余裕が不可欠なのである。 ろう。
先のことを安易に占うことはできないが、少なくとも自分たちは5年間という歳月をかけてプロセスリエンジを通じた地道な足固めに取り組んできた。 その経験を活かして、社員たちはどんな激しい変化にも対応できるはずだ)T園の何のてらいもない率直な感想の背後に、自信に裏づけられたこんな独白を聞いたような気がした。
実現するためには、三段階のアプローチがある。 まず、生産性を高めることによってコストを削減する。
次に、コスト削減をベースにしながら収益性を高め、人材育成に力を注ぐ。 さらに、魅力的な商品と際立った付加価値サービスを提供して顧客の信頼感を高注ぐ。
めていく。 1995年春。
そのときも、T園は5年先のことを考えていた。 「現場の社員たちは、常に1週間あるいは1か月といった短期の目標や成果に追われている。
そうした社員たちに代わって、5年先どうなるのかなと考える。 つまり、社長は自分の時間の8割近くを戦略方向に費やすべきだ、というのが私の持論だ」賛肉のないスリムな体形。

日に焼けて引き締まった肌。 語り口は穏やかだが、まなざしは社長就任3年目、5二歳になったばかりの戸国の頭のなかにあったのは、「これからのAリコは顧客の資産設計に貢献するパーソナルファイナンス業に転換すべきだ」というビジョンだった。
生命保険という商品は、会社にとってはコントロールしにくい商品である。 5年先はどうなるか?生保会社の主な収入源である保険料の料率は、契約期間中に死亡者が出て保険金を支払う確率、将来の保険金の支払いに備えて積み立てる資金の運用によって得られる利息、人件費や設備費など事業にかかる経費などをあらかじめ予想したうえで設定される。
予想よりも死亡者が少ない場合には「死差益」と呼ばれる利益が、運用が好調なら「利差益」と呼ばれる利益が、経費が少なくて済んだ場合には「費差益」と呼ばれる利益が、それぞれ生じることになる。 生保事業の利益は、大別するとこの3つから発生する。
いうまでもないことだが、人間の寿命は誰にも予測できない。 また、運用の目安となる金利を決めるのは国の仕事だ。
したがって、生保会社は「死差益」も「利差益」も自らの努力でコントロールすることはできない。 会社が自らコントロールできるのは「費差益」、つまり事業費の削減を通じて生み出す収益のみである。
当然、ここで削減した費用を魅力的な商品やサービスに反映させることが、生き残りのためにもっとも重要になる。 この部分でどんなコストコントロールを図っていくのか、そこが経営者の腕のふるいどころとなるのである。

新商品開発については、これまでも順調な歩みをたどってきた。 Aリコジャパンはもともと、「日本初」と呼ばれる画期的な新商品を次々に世に送り出し、その名を消費者の頭のなかに刻み込んできた企業である。
当時でいえば、1992年に発売された「生きるための保険エトワ」が爆発的な反響を呼び、業績の伸びにも大きく貢献していた。 「今やるべきことは、業務プロセスの改革を通じてコスト競争力を高めること以外にない」パーソナルファイナンス業という新たなビジョンの実現に向かって、T園は戦略テーマをヨスト競争力」に絞り込んだ。
生損保の相互参入を可能にする「新保険業法」の成立は、すでに時間の問題だった。 来年Aリコジャパンは、1973年(昭和47年)に外資系生保第一号として日本人向け営業を開始して以来、他社の損害保険を扱う損保代理店に自社の生命保険や医療保険を売ってもらう戦略を重視してきた。
損保が生保子会社をつくれば、その損保が代理店に対して「ウチの子会社が扱う生命保険を売ってくれ」と圧力をかけてくるのは当然だ。 その結果、Aリコの生命保険を扱わなくなる代理店が出てくるお10にある。
まさしく逆風に違いない。 その半面、Aリコは世界的な保険.金融サービスグループAIGの主要メンバーでもあり、日本には兄弟会社に当たるAIU保険会社とアメリカンホーム保険会社の2つの損保が存在している。
つまり、損保子会社の設立などに手をわずらわせることなく、「コスト競争力の向上」というテーマに向かって頭脳と経営資源を集中させることができるのだ。 むしろ順風といえるだろう。
規制緩和のもたらす影響は、プラスマイナスゼロ。 いや、逆風を積極的に追い風に変える戦略を打ち出せば、きっとプラスのほうが上回る。
T園は、そう決断した。 そんな折りに、ある外国人役員を通じてJエミニ.コンサルティングという経営コンサルティング会社を知った。
Jエミニは、米国とフランスに本部を構え、1992年に日本支社を開設している。 当時、日本ではまだ一部の企業にしか知られていなかったが、欧米を舞台にプロセス.リエンジニアリングや経営改革の分野で数々の実績を残していた。


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